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SFとBLの魅力が交わる場所『恋する星屑』を読んで感じたこと【ネタバレあり】

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ジャンルを越えて集結した12の才能

『恋する星屑』は、異色の組み合わせ『BLとSF』をテーマにしたアンソロジーです。もともとは、創刊から60年以上という長い歴史を持つSF専門誌『SFマガジン』で、『BLとSF』が二度にわたり特集され、その際に掲載された作品を中心に、さらに書き下ろしを加えて一冊にまとめられたものです。本書には、総勢12名の作家による12作品が収録されており、その多様な顔ぶれが目を引きます。BL作家として知られる方はもちろんのこと、普段は主にSF作品を執筆している作家がBL作品に挑戦している点が、非常に興味深いポイントです。異なるジャンルの作家たちがそれぞれの個性を活かしながら、SFの壮大な世界観とBLの繊細な感情描写を融合させている様子は、本書ならではの魅力といえるでしょう。

BL初心者の新たな挑戦

本書を購入した一番のきっかけは、大好きなBL作品『永遠の昨日』を手がけた榎田尤利先生の作品が収録されていたことです。それに加えて、まだまだBL初心者の僕にとって、アンソロジーはさまざまな作家さんの作品に出会える貴重なチャンスです。自分好みの新しい作家さんを発見することを楽しみにしていました。さらに、ジュラシック・パークXファイルなどのSF作品が好きなこともあり、BLとSFという一見異なるジャンルがどのように融合しているのか興味をそそられたのも理由のひとつです。文庫本にしては分厚く、最初は読み切れるか不安もありましたが、興味深いテーマや好きな作家さんの作品が詰まっていると思うと、手に取らずにはいられませんでした。

多彩な作風に触れて:特に印象的だった3作品

まず一言。前の段落で「分厚くて読み切れるか不安」と書きましたが、それは完全に杞憂でした。どの作品も魅力的で、物語に引き込まれているうちに気がついたら読み終わっていました。ここでは特に印象的だった3作品について触れていきます。 最初は、目当てだった榎田尤利先生の『聖域』です。舞台は近未来、アンドロイドに恋心を抱いてしまったエンジニアが主人公。設定が分かりやすく、文章も読みやすいので、スムーズに物語に没入できました。性描写もしっかり描かれていて、今回の収録作の中でも「BLらしさ」が際立っていました。ただし、ラストにサプライズを持ってくるのが榎田先生の作風なのかなと思いつつも、『永遠の昨日』ほどの衝撃はなく、紙面の限界が影響したのかもしれません。 次に、琴柱遥先生の『風が吹く日を待っている』。舞台は1960年代から1970年代で、オメガバース設定を文化人類学視点で描いた作品です。学術的な描写が非常に緻密で、オメガバースが現実に存在するかのような説得力がありました。研究者ロビンが研究対象であるトゥラシーに抱く恋心は直接的には描かれず、詳細なレポートを通して二人の親密さが間接的に伝わるところが素晴らしいです。トゥラシーには生き別れた番がいるため、ロビンの思いが報われない切なさも、オメガバース設定を巧みに活かしていました。 最後に、尾上与一先生の『テセウスを殺す』。こちらは近未来が舞台で、BL要素は控えめながらもSFとして非常に面白い作品でした。ガジェットが多数登場する戦闘シーンや、『意志の中核(テセウス)』が他人の肉体に移行するという独特な設定、人の魂が弾丸になる描写など、想像力を刺激される内容が盛りだくさん。SFファンとしても大満足の一作でした。

異世界での恋愛とBLの葛藤

本書を通じて、今まで読んだことのない作家さんたちの作品に触れることができた点はとても楽しく、貴重な体験でした。しかし、BLとしての満足度には多少不満が残りました。その理由は、SF設定を重視するあまり、近未来やオメガバースを舞台にした作品が多く、そうした世界では男性同士の恋愛がすでに当たり前になっているからです。僕がBL作品に求める魅力の一つは、異性愛者の恋愛にはない、同性愛者としての葛藤が描かれている点です。この葛藤をどう乗り越えるかを見守るのが、BLを楽しむ大きな要素の一つなのですが、上記のような設定ではその葛藤が描かれないことが多く、少し物足りなさを感じてしまいました。それでも、SFとBLの異色の組み合わせは新鮮で、楽しませてもらいました。

 

評価

ストーリー:★★★☆☆

キャラクター:★★★☆☆

読みやすさ:★★★★☆

エロ度:★★☆☆☆

メッセージ性:★★★☆☆

 

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